堺刃物と昆布が出会い生まれた堺ブランド

 堺ブランドにもなっている昆布、その美味しさを届けたいと、昭和21年の創業から手すき昆布にこだわり製造販売を続けている堺の郷田商店さんにお伺いしてきました。
 

昆布ロードが生んだ関西の出汁文化

 昆布は鎌倉中期以降に船で北海道と本州を行き交うようになり徐々にでまわるようになってきました。14世紀以降、北前船の性能が良くなり、福井県の小浜まで届くと昆布は鯖街道をとおり京都・大阪まで届くようになります。北前船によってもたらされた昆布、それが関西の出汁文化の礎になりました。

 江戸時代に入り、さらに海上交通はさらに盛んになると、下関から瀬戸内海を通り天下の台所である大阪までくるようになります。これらの昆布を運んだルートを総称して「昆布ロード」と呼びます。

郷田商店_真昆布
北海道産の最高級真昆布
 

昆布が堺刃物と出会い生まれた手すき昆布

 堺では刃物の技術が素晴らしかったため、特殊な刃物を使って昆布を削るとろろ昆布やおぼろ昆布の加工が盛んになりました。最盛期の大正から昭和初期にかけては、約150軒の昆布加工業者があったそうです。

 手すき昆布は北海道の最高級「白口浜真昆布」を使用。すく前に、酢につけて柔らかくしてから削っていきます。創業以来継ぎ足して使ってきた酢は、昆布のうまみが染み出し郷田商店ならではの美味しさの秘密となっています。

 おぼろ昆布は昆布の表面を平らな刃の包丁で漉いていきます。熟練の職人がすいたおぼろ昆布は、なんと厚さ0.02~0.03ミリという極薄に削り取られています。とろろ昆布は刃先がぎざぎざになっていることで、糸状になります。

郷田商店_手すき昆布
職人さんが堺刃物を使って1枚1枚丁寧にすいていきます
 

堺の老舗コラボで生まれた新感覚の調味料「塩糀昆布」

 近年、昆布の需要が減っていて、新商品が出にくいと言われる業界で昨年春、新感覚の調味料が発売されました。雨風醤油さんとのコラボで生まれた「塩糀昆布」です。

 きっかけは、元禄二年創業で醤油・麹などの製造販売をされている雨風醤油さんより、粉末塩糀と昆布のコラボ商品ができないかと相談されたことがきっかけだったそうです。

 郷田商店二代目の郷田光伸社長は、昆布と粉末塩糀の絶妙な混ざり具合を見極めるため、昆布の形や乾燥具合を何度も何度も試作したそうです。昆布が大きいと瓶に入らなかったり、湿気が多いと瓶の中で引っ付いて出てこなかったり、乾燥させすぎると昆布と粉末塩糀がうまく絡み合わないなど、苦労があったそうです。

郷田商店_塩糀昆布
新感覚調味料として人気の塩糀昆布
 
 そうして出来上がったのが、「塩糀昆布」なのです。テレビでも紹介された新商品「塩糀昆布」は、人気のあまり品薄状態になったほどです。
※粉末塩糀は雨風醤油さんの特許商品です。
 

身体によくて美味しいものを届けたい

 バッテラ寿しに使われる白板昆布は、表面を削った昆布の芯の部分を使うので、手すきでないと作れません。戦争で多くの加工業者が焼けてしまい、今では昆布をすく職人さんも減っています。美味しい手すき昆布を食べてもらいたいと、郷田商店では現在5人の職人が昆布づくりに携わっています。有名老舗昆布店のOEM商品の加工などもおこなっています。昆布はミネラルや食物繊維をたっぷり含んでいるので、身体にもいい食品です。

郷田商店_白板昆布
手すきでしかできない白板昆布
 
 塩糀昆布を販売してから、今まで取り引きのなかった洋食店や雑貨店なども得意先になって来たそうです。「出汁昆布の需要が減ってきている。ギフトや正月料理に使われることが多い昆布ですが、これをきっかけにもっと身近に昆布を味わってもらいたですね」とにこやかな笑顔で語っていただきました。

郷田商店_郷田社長
郷田商店・二代目の郷田光伸社長

 株式会社郷田商店  詳細情報

取材協力:株式会社郷田商店
取材日:2014年10月15日(水)
取材・撮影:いしかわいづみ

株式会社郷田商店

創業以来、職人の手加工による昆布製品をつくり続けてきました。その中で一貫してこだわってきたのは、美味しくて、身体のためによいものであること。「全ての人々の健康と幸福のために、誠実で熱意あるものづくりを遂行する」

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