証券マンから「蒟蒻屋」の4代目に

 安心安全でおいしいこんにゃくを食べてもらいたいと先代が作りだし製造を始めた木灰こんにゃくを、若い世代が受け継いでいる。堺市内で唯一こんにゃく・ところてんを製造し、“ほんもの”のこんにゃくを食べてもらいたい、と奮闘している中尾食品工業さんを訪ねました。

中尾食品_外観
 

四代目はだんじり好きの元証券マン

 事務所で待たせていただいていると、現れたのはマスクをした若者でした。『先週末は祭りだったので、声の調子が悪くてすいません』とマスクを外した顔があまりにも若く見えたので『おいくつですか?』と思わず聞いてしまいました。『26です』と答えたその手には代表取締役の名刺が。

 幼いころから地元である鳳地区のだんじり祭りに参加している中尾社長。仲間と一つのことに取り組んだり、何か重要な物事を決定するときに、きちんと話し合って決めるという経験は役に立っていると話す。大学を卒業後、2年間和歌山県で証券会社に務めた中尾友彦さん。その後、会社を継ぐにあたって「曾祖父の代から続く会社を自分の代ではつぶせない」という重圧は大きかったそうですが、祭りや証券会社での経験を会社の経営にも生かされているそうです。

中尾食品_友彦社長
四代目・中尾友彦社長
 

職人気質の会長が作り上げた昔ながらのこんにゃく

 木灰こんにゃくを製造するきっかけは、康司会長が三代目社長を務めている時に、ある企業から提案を受けたことがきっかけでした。康司会長は、友彦社長のお父様で機械のメンテナンスもご自身でされるという職人気質で研究好き。

中尾食品_康司会長
三代目の中尾康司会長
 
 康司会長は、自身が農家もしていた経験から美味しいものを作りたいという気持ちはとても熱かったそうです。有機栽培のこんにゃく芋を100パーセント使用し、凝固剤に木灰の灰汁(あくじる※うわずみを使用)を使った昔ながらの製法で木灰こんにゃく作りに取り組みました。生芋100パーセントのこんにゃくのりを灰汁で固めるには技術を要します。そのため商品化するまでに、康司会長はかなりの研究をされたそうです。
 

木灰こんにゃくと一般的なこんにゃくの違い

 こんにゃくには「生詰(なまづめ)」、「オード」、「缶製(かんせい)」という3種類の製法があります。スーパーなどで売られている安価なこんにゃくの製法は生詰で、こんにゃく芋を製粉したものを使用し袋詰めと炊き上げる工程を同時に行うコストのかからない製法です。凝固剤には、アルカリ性の強い消石灰(水酸化カルシウム)を使用しています。こんにゃく臭さの原因はこの凝固剤にあるのです。

 木灰こんにゃくは無農薬で放射能の影響を受けていない材料を使用しています。原料の芋は広島県で有機栽培した3年もののこんにゃく芋を100パーセント使用し、木灰も関西の間伐材(クヌギ・コナラ・アベマキ・カシなどの自然木が原料で建築廃材は含まない)から作られたペレットを自社ボイラーで灰にして精製。

中尾食品_こんにゃく芋
広島県の契約農家で有機栽培で育てた3年もののこんにゃく芋
 
 また製法にもこだわりがあります。こんにゃくの生芋を皮ごとすりおろしグルコマンナンを抽出した“のり”を水で溶き、昔ながらの缶製という製法で製造します。約5kgもあるこんにゃくの大きな塊(通称:まくら)にします。2晩かけてじっくり成形するのでアルカリ分も抜けて、あく抜き不要の美味しいこんにゃくになるのです。
 

健康食品であるこんにゃくをもっと多くの人に

 最近の検査結果で、木灰こんにゃくには美肌成分で有名なセラミドが含有されていることが分かりました。もともとセラミド成分を多く含むこんにゃく芋ですが、製粉する過程でほとんどが消えてしまいます。生のこんにゃく芋を使用している木灰こんにゃくだけは、セラミド成分がしっかり残っていたそうです。(100gあたり1mg含有)
 また、こんにゃく芋に含まれるグルコマンナンは、人の体では消化できないできない食物繊維で整腸作用があります。ダイエットと美肌効果が期待できる木灰こんにゃくは、現代人にとって必須食材ですね。

中尾食品_こんにゃく
製造工程を通って出来上がった木灰糸こんにゃく
 

“ほんもの”のこんにゃくを海外でも食べてもらいたい

 先代が開発し製造販売を始めた木灰こんにゃく、ただ、いいものを作ろうとするとどうしてもコストがかかってしまう。それでも「一般的なこんにゃく粉を使ったこんにゃくとの住み分けは明確になってくると思います」と友彦社長。

 海外旅行によく行くという中尾社長は、海外のスーパーでこんにゃくが売られているのを何度も見かけたそうです。今の状態では、税関の関係で輸出が難しいとわかりました。そこで欧米のヌードル文化に合わせた商品開発も考えているそうです。

 昨年末、和食がユネスコの無形文化遺産に登録されたことで、ますます注目を集めています。「和食といえば一番に煮物が連想されるそうで、煮物にこんにゃくはつきものでしょう。必然的にこんにゃくへの注目度も上がると思います。そこでどう売っていくかが生き残りをかけた経営戦略になると思います」と展望を語った。若さあふれる笑顔の中に、元証券マンらしい将来を見据えた力強い瞳を持った友彦社長、これからが益々楽しみな会社です。

中尾食品_友彦社長と康司会長
先代の中尾康司会長(右)と四代目・中尾友彦社長(左)

 中尾食品工業株式会社  詳細情報

取材協力:中尾食品工業株式会社
取材日:2014年10月8日(水)
取材・撮影:いしかわいづみ

中尾食品工業株式会社

昔ながらの木灰で固める“木灰こんにゃく”の製造に成功しました。現在では珍しくなったこの伝統的なこんにゃくは、こんにゃくマンナンや水酸化カルシウムを使った臭みのある市販品と違い、たいへん風味のあるおいしいこんにゃくです。 原材料も放射能汚染の影響がない広島県産有機生芋を100%使用しております。一度食べたら他のこんにゃくが食べれなくなります。大好きな人の明日の健康に奉仕したい!

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