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日本最古の櫛産地
日本有数の木櫛(つげ櫛)の産地として広く知られ、工芸品としての質の高さから大阪府知事指定伝統工芸品に指定されている和泉櫛。「欽明天皇(6世紀後半)のころ、8種類の櫛つくりの器具を持った異国人が貝塚市二色の浜に流れ着き、櫛の製法を伝授した」という言い伝えがあり、貝塚市は日本最古の櫛産地と言われています。
そんな貝塚市で今も国産の薩摩柘植(さつまつげ)を使い、歯の一本一本を手で仕上げ最高級の和泉櫛を作り続ける西川木櫛製作所にお邪魔してきました。
最盛期の江戸中期から減り続ける櫛職人
「(昭和の)戦後間もない頃は、貝塚周辺だけで200~300人ほどの職人が家で櫛を作ってたんや。農作業の合い間にな、内職で作ってたんや」と話すのは、40年近くも和泉櫛を作り続け、泉州木櫛商榮組合(せんしゅうきぐししょうえいくみあい)の副会長も務める西川健治さん。江戸時代中期には貝塚を中心に500人を超える職人がいたと記録があるが、今では組合に登録されているのはわずかに6軒だそうです。
守り続ける伝統の製法とこだわり
櫛を作る工程は、まず原木の『そりを修正』すると同時に『乾燥』させる必要があります。
板は櫛の大きさに合わせて切られたかまぼこ板のような長方形で、長辺の片方が櫛の先になるので少し細くなっています。
この原木の反りを修正するために、わずかに凹んだ側同士を組み合わせます。
このように組み合わせたものをさらに数十枚組み合わせてひもでしっかりとくくります。
それを燻部(くすべ)で約2週間ほ ど燻蒸(くんじょう)します。煙をたいていぶす、つまり木の燻製(くんせい)をつくるのです。
そのあと原木を乾燥さ せるために1年以上もねかせますが、中には30年以上寝かせているものもありました。こうすることで木が熟成され、歯こぼれのしにくい木になそうです。
乾燥させ熟成させておいた原木を『板削り(いたけずり)』という作業で表面を削ります。この段階で節や細かな傷のチェックをして、私には言われないとわからないような傷でも商品には使わない、と最高級の櫛にこだわる西川さん。
次に機械でそれぞれの大きさに合わせた木型で『歯挽き(はびき)』をして歯を作ります。
そのあと『歯摺り(はすり)』で歯を1本ずつ手作業で仕上げていくのだが、その前にやすりを通りやすくするために『先付け(さきつけ)』という作業で先を細くします。
歯を作ると櫛の形に成型し、最後に研磨仕上げをする。西川さんは研磨作業のためになんと7種類ものペーパーを使って丁寧に仕上げていきます。このようにして出来上がっていく櫛たちをまるで子供のようだと話していました。一つ一つの工程を丁寧に作業していくことを『命を吹き込んでいくように』と表現していたのが印象的でした。
私もその場で櫛を試してみました。癖のある私の髪でも櫛通りがなめらかで、冬場に髪をとかすと よく聞くあの「パチパチ」という音は全くしませんでした。何よりも手触りが最高です。原木からは想像もできないほどのつやのある表面は手にしっとりとなじむ感覚です。つげ櫛はプラスチックやセルロイドに比べ、静電気を起こしにくい特徴があり髪を傷めないそうです。『美しい髪は女性の命』と言われるほど大切な『髪』。和泉櫛はそんな艶のある美しい髪を大切にしたい人たちに長く愛用していただきたい逸品です。