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明治20年(1887年)の創業当時より果物の専門店として小売業を営んできた有限会社千総。「アトリエコンフィチュール」というオリジナルブランドを立ち上げ、果物店の新しいスタイルを模索し進化しようとしています。千総の四代目・西辻宏道さんにお話を伺ってきました。
きっかけはお客様に喜んでもらいたいという思い
コンフィチュールを作るきっかけは「先代の時にお中元やお歳暮などギフト買っていただたお得意さんに、手作りジャムを作ってプレゼントしていたのが始まりなんです。ラベルまで手描きやったからね。それが美味しいっていうて、売ってほしいという要望が多かったんです」と当時の様子を語ってくれたのは有限会社千総の四代目・西辻宏道さん。
厳しい果物の小売り業界から製造加工へ
果物業界は厳しくバブル崩壊後、国内の果物店は次々と姿を消していきました。全国に約二万店あった果物屋さんは戦前より少ない六千店ほどに減っているそうです。悩みに悩んだ末、やはり明治時代から続く老舗をつぶしたくないという思いから28歳という若さで社長に就任することを決意しました。
平成14年に「アトリエコンフィチュール」というオリジナルブランドを設立、お客様に喜んでもらえる商品作りを実現するために、無添加にこだわったクラシカルジャム、コンフィチュールの製造加工をはじめました。
どうしても美味しいジャムを作りたい
当初、工場を設立するに当たり、ジャムの瓶詰・缶詰製造許可を得るために保健所に申請しましたが、堺市ではO-157の痛手からなかなか生の果物を加工する工場に対し製造許可が下りなかったそうです。それでも、新鮮でおいしいジャムを作りたいという思いから何カ月も保健所に通いようやく許可が下りました。
現在は四種類の製造許可を取得し、自社製品以外にもPB(プライベートブランド)やOEM商品、有名ホテルや有名料理研究家のブランド商品も製造しています。OEM商品を作ることにより、製造加工のクオリティーは格段に良くなったそうです。
「原点は果物屋なのでコンセプトはシンプルに『フルーツの美味しさをピュアに出したい』なんです」と西辻社長。アトリエコンフィチュールのクラシカルジャムは、美味しさにこだわった果物と砂糖だけで作られた無添加の手作り商品です。そのため生産量に限りがあります。
新しい果物屋のスタイルを作りたい
西辻さんは実際に地元で果物を作りたいと考え始めました。3年前から農地を探しに奔走しました。栽培するなら地元でということで地元で休耕地を探していましたが、果物栽培に農地を貸してくれるところはなかなか見つからなかったそうです。
なんとか農地を見つけ、昨年から和泉市と堺市で自社農園をはじめました。現在、ブルーベリーやラズベリーブラックベリー、いちじく、柿などの栽培をしています。
自社農園でのブルーベリーの育苗風景(画像提供:有限会社千総)
果物業界自体が厳しい時代で小売業だけでない、果物屋としての新しいスタイルを模索している西辻さん。「すべてを生産できるわけではないが、果物の生産(第一次産業)から加工(第二次産業)そして流通・販売(第三次産業)と六次産業化することで販売コストを抑え、いいものを直接顧客に売りたい。観光農園にして食育にも力を入れていきたい」と語る西辻さんの笑顔はとても楽しそうでした。