受け継がれる伝統 売れ続ける泉州銘菓「村雨」 人気の秘密は

 安政元年(西暦1854年)の創業当時より村雨を作り続けている塩五。村雨は泉州を代表する銘菓の一つとなっています。創業以来、変わらぬ人気で売れ続ける伝統の味「村雨」の人気の秘密をお聞きしてきました。
 

幕末から160年続く老舗和菓子店

 安政元年(西暦1854年)創業の塩五。貝塚市内の旧26号線沿いにあり、蔵屋敷のような店の造りが歴史を感じさせます。店舗入り口の上にある「村雨」の看板は明治の書道家で、将棋の阪田三吉に「馬」の字を教えたことでも知られる中村眉山(びざん)の書です。

塩五_店舗外観
 

村雨ってどんなお菓子?

 村雨は小豆と米粉と砂糖のみで作られた、棹物の蒸し菓子です。見た目はそぼろ状のつぶつぶ感があります。

塩五_村雨
出来たての村雨は見た目もしっとり
 
 小豆を柔らかく炊き、皮を取り除いて細かくすりつぶし、水分をとばした状態を「生あん」と言います。生あんに、米粉と砂糖を混ぜ合わせそぼろ状になったものを特製の蒸籠(せいろ)に詰めて蒸しあげます。

塩五_せいろ
村雨の生地を敷き詰める特製の蒸籠(せいろ)
 
 蒸す前はそぼろ状なのですが、蒸すことにより米粉の成分でホロホロとした独特の口あたりで、楊枝を入れると柔らかく崩れるような感じです。口に入れて噛むともちもちとした食感になり、ほんのりとした甘さが口に広がります。添加物を一切加えず小豆と米粉と砂糖のみで作られた、安心して召し上がっていただける和菓子です。

塩五_商標登録
 
 泉州地域には村雨とよく似た製法で作られる和菓子がいくつかあります。小豆の粒が入ったものや白色の物などバリエーションがあります。それらの和菓子の総称と思われがちですが、「村雨」の発祥は塩五で商標登録されています。
 

悩みの種は賞味期限が短いことでした

 蒸して作られる村雨は、表面が乾燥してしまうことと添加物を使っていないため、日持ちが製造当日か翌日でした。そこで先代が工夫をしたのは包装の仕方です。昔は村雨の上下を薄い杉の板ではさみ、竹の皮で包んでいました。乾燥を防ぐために厚手のセロファンで包み紙製の箱に入れるようになり、2~3日に伸びたそうです。

塩五_村雨パッケージ
外箱が竹の皮の模様になっているのは、当時の面影を残したため
 

優しい笑顔が印象的な六代目の塩谷さん

 塩五の家業を継いだ方々は名前に「五」がつく方が多いそうです。お話を伺った六代目の塩谷さんも名前は五男(いつお)さんですが、5男ではありません。

 六代目の塩谷さんは、村雨でもっといろんな商品ができないかと試行錯誤した時期があるそうです。『村雨をとかして羊かんみたいにしてみたりね。けど、どれも村雨から大きく外れることはなくて、バリエーションを増やしても結局どっちつかずになってしまうから』ということで、伝統の村雨作りに戻って来たそうです。

塩五_塩谷五男さん
塩五・六代目の塩谷五男さん。「御菓子」の看板は親戚で竹工芸家・二代目田邊竹雲斎の書

 それでも村雨の製法を崩さない新商品は生まれました。昔は売れ残った村雨を崩して、餡を入れて蒸しなおしたものを、おやつとして食べていたそうです。それが大変おいしかったので、商品化したものが村雨まんじゅうです。こちらはあんこ好きの方に大変人気のある商品で、一個ずつ個別にケースに入っています。

塩五_村雨饅頭
村雨の生地で粒餡を包み、釣鐘状に蒸し固めた村雨まんじゅう

 村雨と同じような製法でよく似た名前の商品が多く売られていて、他市の銘菓と間違われることもあります。塩五では『上質の北海道産と丹波産の小豆を使ってます。出来上がりの味や色を考えて独自の配合して使ってます。あと、米粉もうるち米と粘りのあるもち米を、口に入れた時のもちもち感を考えてブレンドしてるんです』と塩谷さん。材料の独自の配合が美味しさの秘密なんですね。美しい小豆の色と上品で控えめな甘さで、いくつでも食べてしまえそうです。

 村雨本舗 塩五  詳細情報

取材協力:株式会社塩五
取材日:2014年9月29日(月)
取材・撮影:いしかわいづみ

村雨本舗 塩五

江戸末期の安政元年(1854年)創業の塩五は、村雨発祥の店です。上質の小豆と砂糖と米粉を使った村雨を、ぜひ一度ご賞味ください。「村雨」は塩五の商標登録です。

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