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野菜の燻製という目新しい商品のインパクトで注目を集め、味の良さで業績を伸ばそうと奮闘している髙谷琥珀堂さんを訪ねてきました。
福祉の世界からみた地域社会
代表の高垣直樹さんは、大学・大学院と福祉関係の勉強をされ卒業後は心理カウンセラーとして児童養護施設や小中学校などで多くの子供たちと接してきました。その時、施設の子供たちの保護者が将来についての不安を話していたそうです。話を聞いて高垣さんの中には一つの強い思いがうまれました。しばらくして独立し、介護サービスの会社を始めました。
起業して8年、高垣さんは持ち続けていた思いを実行したいと、高校からの友人で某大手食品メーカー営業マンであった中谷高司さんに相談したそうです。
それは障害を持つ人を受け入れる会社を作りたい、作業所とは違う、お客さんに喜んでもらえる商品を作って必要とされる仕事をしてもらいたいという思いでした。
大手にはできないものをつくろう
2人の本気の想いより、2013年7月に会社を立ち上げましたが、多くの食料品・食材があふれる中で商品を売るためにはやはりインパクトが必要だ、と考えたのです。大手ではできない、手のこんだ、地元に特化した食材を使った野菜の燻製という一般的なスーパーではあまり見かけない食品加工をはじめました。
野菜の仕入れなどは素人のお二人、食材探しは産直市場などでリサーチし、同じ種類の野菜を様々な地元農家から取り寄せて食べ比べました。各農家さんや漁師さん、その他業者さんとの交渉は明るい声のトーンでハキハキと話される中谷高司さんが、営業経験を活かして飛び込みで積極的に開拓していったそうです。
実際に食材を食べ比べてみると、同じ野菜でも味の違いがかなりあったそうです。二人で一緒に試食して、どんな種類の食材がいいか、どこの食材がいいか常に話し合い、二人が本当に美味しいと感じた食材を作っている生産者さんから仕入れているそうです。
鰹のたたきの燻製は、二人ではるばる高知県まで足を運び、水揚げされたばかりの新鮮な鰹を仕入れてきてきました。現地で鰹のたたきのつくり方も学び、手間暇を惜しまず自社で加工してたたきにしたものを燻製に仕上げたそうです。
野菜以外にも魚やかまぼこなどさまざまな食材を燻製にしています
失敗の繰り返しから生まれた新商品
野菜の食べ方のバリエーションを増やす燻製ですが、すべての野菜が燻製に向いているわけではありません。様々な食材を試す中で失敗もありました。きゅうりとナスは燻製にするには水分が多く、うまくいかなかったそうです。完成して試食し、二人が納得したもの、そして営業担当の中谷さんのイメージが一致したときに商品化して販売しているそうです。
二人で意見を出し合い食材の選定をし、主に製造担当をする高垣さん、販売担当をする中谷さん。お話を伺っていても、仕事の分担をとてもうまくされている印象をうけました。
二人の意見がぶつかることはないですかと質問をしたところ、これまで大きく意見がぶつかることはなかったとのこと。
作業しているキッチンは素晴らしく整理整頓がされていて清潔でした
プロの料理人たちにも愛される商品
地元の美味しいものを作りたいというコンセプトで燻製から始めた食品加工ですが、燻製以外の惣菜等も製造しています。たとえば泉州食材のみで使った、その名も”泉州ロールキャベツ”は大阪京橋で大人気のワインバー様から特別提案・注文を受けた事から商品化となったそうです。
そのほかにも飲食店様からの引き合いがあり、そのご紹介等もあって徐々に取引先は増えていっているそうです。
目標は社会貢献
一見すると武道でもされていたのかな?というような落ち着いた雰囲気の中に芯の強さを感じさせる高垣さんは「おいしいものを作って必要とされる商品を提供したい。会社が軌道に乗って障害のある人たちに雇用の場を提供し、きちんとしたお給料を払えるような会社にすることが目標なんです」と、物静かな口調ながら力強く語ってくれました。また「今、弊社を担いで頂いているお客様が確実に増えております。来年は、個人的にも会社的にも試される3年目ですから、一層身が引き締まりますね」と中谷さん。素晴らしい目標を持った企業が、泉州地域に生まれたことが嬉しいですね。
代表取締役の高垣直樹さん(左)と、高谷琥珀堂長の中谷高司さん(右)